VOL_3:企業×日本文理大学

人事担当者が本音で語る、
今、「求める人材」とは。

大分を拠点に、総合エレクトロニクス・メカトロニクスメーカーとして
グローバルに事業を展開する株式会社デンケン。
年間宿泊者数70万人を誇り、国内リゾートホテルのトップランナーとして走り続ける
別府温泉 杉乃井ホテル(杉乃井ホテル&リゾート株式会社)。
今回は両社の人事ご担当者をお招きし、
NBUの副学長 橋本堅次郎と、これからの時代に求められる「人材」について、
それぞれの立場から本音で語っていただきました。

藤嶋 啓志 氏

企業が求める、高いコミュニケーション能力。

橋本 「お二人は人事ご担当者として、採用や人材育成をされていらっしゃいますが、社員を採用するにあたり、特に重視されている点はどこですか?」

藤嶋 「デンケンは電子機器に関する『ものづくり』を行っており、最近は国籍を問わず優秀なエンジニアを求めています。その中で最も重視しているのが、コミュニケーション能力の高さです。部署を問わず、社内スタッフから、コミュニケーションを円滑に図れる人材の採用を求める声が出ています。」

橋本 「エンジニアというと技術力の高さを求められる印象がありますが、現場では、相手の意図を理解し、チームの一員として意見が言えることが重要なのですね。」

藤嶋 「取引先の方々とお話をするだけでなく、社員同士で密接にコミュニケーションを取ることが、新たなアイデアの創出に繋がることも多くあります。」

工藤 「私たちも採用の際は、やはりコミュニケーション能力を重視しますね。お客様と直接お話をする機会の多いサービス業は、会話をスムーズに続けることが大切。『いらっしゃいませ』、『今日はどちらからいらしたのですか』という会話のきっかけを掴んだあと、その先の広がりをつくることで、お客様からの印象はずいぶんと変わります。」

橋本 「本学では、学生が高いコミュニケーション能力を身に付けるために、『人との関わり』、『社会との関わり』を重視し、1年次から地域や企業の方々と共に、課題解決に取り組む教育プログラムを設けています。産学連携、地域との連携のなかで、キャンパス内での授業だけでなく、地元、大分をフィールドにした人材育成に注力しています。企業の皆さまは、大学と連携を図りながら学生を育てていくことについてどうお考えですか?」

藤嶋 「最近はインターンシップの重要性を感じています。就職活動より以前に、学生が企業で実体験を積むことは、学生にとっても、企業にとってもプラスのことだと感じています。正直、中小企業では学生を受け入れる体制を整えるのが難しいという課題もありますが、インターンシップは社会に溶け込むための貴重な機会だと捉えています。」

工藤 「当社もインターンシップの重要性は理解しています。繁忙期以外の時期であれば、積極的に受け入れるようにしています。」

橋本 「私たちは『学生を育てたい』という想いがあり、企業の方々は『良い人材を見つけたい』という思いがある。ご協力いただく企業の方々のさまざまな負担を抑えながら、お互いにとってベストな形で連携していきたいですね。」

藤嶋 啓志 氏

卒業生が企業と学生をつないでゆく。

橋本 「両社には本学の卒業生が在職していますが、元気で頑張っていますか?」

藤嶋 「先日、NBUで当社の会社説明会を行った時、現場で働いているNBUの卒業生が話をしました。それだけで会場の雰囲気が和やかになりました。大学時代に学んだことを活かして、今はこんな仕事をしているという話を具体的に伝えていました。卒業生は、企業の人事担当者と現役大学生をつなぐパイプ役として、とても大切な存在です。」

工藤 「私たちが自社のことを話すよりも、卒業生が学生に語りかける方が親近感も湧くでしょうし、分かりやすいと思いますね。説明する本人にとっても、後輩が自分の経験談を聞いて参考にしてくれるということが励みになり、やる気にもつながると思います。」

橋本 「学生には『就職はご縁でもある』と話していますが、本学の卒業生は学生と企業の良い縁結び役ですよね。卒業生が立派な社会人としての姿を見せてくれると、私たちも安心します。ところで、最近の傾向として、自分の生まれ育った場所での就職を希望する学生が増えています。企業の方々はこうした、地元志向の学生についてどう思われていますか?」

藤嶋 「地元には家族や友人がいるという安心感もあるのかもしれませんね。県内、県外、どちらを志望してもいいと思いますが、知らない場所や世界へ飛び込んでいく勇気を持つことが大事だと思います。当社も、未知の分野へ事業展開を行いながら成長していくことを目指していますので、その一員として、積極的にチャレンジしていける人材が必要だと感じています。」

工藤 「地元の学生、県外の学生問わず募集しているのですが、やはり地元志向の学生が多い印象を受けますね。地元で就職するにしても、ボランティアや旅行、なんでもいいのでいろんな場所で経験を重ねて、仕事に生かして欲しいと思いますね。」

工藤 由美子 氏

橋本 堅次郎 副学長

未来の企業を支えるのは、「グローカリスト」。

橋本 「デンケンは、海外や世界に目を向けたグローバルな事業を展開していますね。」

藤嶋 「当社は韓国や台湾の企業とも取引を行っています。今後はさらに多くの国々と繋がっていくことを目指しているので、世界を視野にグローバルに活躍できる人材を必要としています。もちろんNBUの留学生も採用しています。」

橋本 「ものづくりというフィールドにおいて、優秀な人材なら国籍を問わず、採用されていますね。」

橋本 「杉乃井ホテル&リゾートには、中国、韓国などアジア圏を中心に、海外から多くの観光客がいらっしゃると思いますが、サービス業における、グローバルコミュニケーションについてどのようにお考えですか?」

工藤 「中国や台湾、韓国など、ホテル内はさまざまな国の言葉が飛び交っています。当社では様々な国から人材を採用していますので、20カ国以上の言葉に対応することができるんです。採用においては、留学生や日本人学生という枠組みを設けていません。大事なのは国籍ではなく、お客様に信頼していただける魅力的な人間であるかどうかなのです。」

橋本 「私たちは学生に『NBUで何を学ぶのか?』、『自分で考えて行動することの大切さ』を教えています。自分が何を学ぶべきなのか気付いた学生は積極的に行動できるようになります。世界で起こっている出来事を見つめ、地域で行動する。創立50周年に掲げた『グローカリスト』の姿がNBUにはあります。」

橋本 堅次郎 副学長

これからの時代、輝くために必要な力とは。

橋本 「人材の確保や育成は、企業の持続的な成長において非常に重要なポイントですよね。単刀直入にお聞きしますが、大学生が御社に入社するにあたり、学生生活で身につけるべき力はどのような力だとお考えですか?」

藤嶋 「自分がこの会社で何をやりたいのか、何を成し遂げたいのかという『目的意識』を強く持てるように、日々を過ごしてほしいと思います。その意識が強ければ強いほど、成長のスピードも早くなります。」

工藤 「誰かの指示を受けてから行動するのではなく、自分で考え、自発的に行動できる『積極性』を身につけて欲しいです。サービス業のみに限らず、どのような職種でも、社会に出る時には必ず必要なものだと思いますから。自分の殻を破って、積極的にコミュニケーションを図れる力強さを身につけて欲しいです。」

藤嶋 「誰かとつながり、ひとつになることが『積極性』や『目的意識』を持つことにつながると思いますね。そういったものを学生に身につけさせるため、NBUで注力している点はどういったことですか?」

橋本 「必要なのは、まず『半歩前に出る力』。1歩ではなくても、半歩でも前に踏み出せれば成長する可能性は十分にあります。次に『選択肢を考え抜く力』。いつも『どうしたら自分の能力が向上するんだろう』と考えていると、様々な選択肢の中から正解を導き出す力が身に着きます。そして最後にもうひとつ『諦めない力』。「もう限界だ」、「面倒だから」と、自分の越えるべきハードルを下げるのではなく、根気強く物事にチャレンジする。結果を出すためにもがき続けることが大切なんです。」

工藤 「高校までの教育と違い、大学においては、自ら行動して学ぶことが大切ですよね。」

橋本 「その通りです。ところで、NBUは創立50周年を迎えました。この50年間で働くこと、就職に対する価値観は変わりましたが、今後、NBUの学生に求める人材像や、このような大学になって欲しいというリクエストはありませんか?」

藤嶋 「学生に、何かを成し遂げたいという目的意識を持たせる『実践的な教育』が大事だと思います。日本の企業が、国内はもちろん、世界で競争力を保っていくには、これからの時代を担う若者が、まずは大学でどう過ごすのかが、非常に重要だと感じますね。」

工藤 「勉強はもちろんですが、学生一人ひとりが本来持っている『人間力』を養って欲しいです。社会に出た時、さまざまな課題や問題に対応できる能力や知識など、社会人として生きていくための総合的な力が身につく場所であって欲しいですね。」

橋本 「今後少子化で世の中が変化していく中で、最も価値を生み出せるのは『自立した人間』だと考えています。自立には、人間としての精神的な自立と、知識や経験を兼ね備えた知的な自立があります。価値を生む自立した人間を社会に送り出し、『地域になくてはならない大学』になる。これからも、試行錯誤を重ねながら、学生を大切に育てていきたいです。今日は貴重なお話をありがとうございました。」

PROFILE

株式会社デンケン
人材開発部 顧問
藤嶋 啓志 Keiji Fujishima
杉乃井ホテル&リゾート株式会社
総務部 人事課 リーダー
工藤 由美子 Yumiko Kudo
日本文理大学
副学長
橋本 堅次郎 Kenjiro Hashimoto